2009-04-03

4/3:平常心

今日は嗅窩部髄膜腫。最大径6.8cmで両側視神経管に食い込んでる難易度の高い症例だった。ボスは、他にも2件の手術を抱えていて、ときどきそっちに行っていなくなる。これは日本では決してないことだが、こちらでは普通にある。ボスのいない間は手術を任されて、かなり自分でできたのでそれは良かった。ボスが他の手術から帰ってきて、ボスもよしよしと言いつつご機嫌で交代したのだが、そこから先が戦場だった。
 ボスに交代してから、やはり腫瘍が巨大なため、最終局面で架橋静脈が切れたり皮質動脈を2本犠牲にしなくてはならなかったりとかなり厳しい状況に。ふだんのボスは温厚で手術も早くて結果も良いため、ナースからも絶大なる信頼を得ているが、今日だけはいつもと違った。うまくいかないときは時に、"Shoot!"とかたまーに"Shit!"とぶつぶつ言うことは今までもあった。でも今日はそれ以上のfour letter wordsも。さらにボスは不機嫌になりスクラブナースに当たり、手術室の雰囲気も凍りついた。それでも、形としてほぼ完全な手術に持って行き、最後は"Now, I'm happy"といって満足したようだった。11時間の手術でかなり応えたのか、「患者の状態を後で携帯に電話して教えてくれ」と患者さんの覚醒を待たずに帰ってしまった。患者さんが麻酔から覚めた後、視力含め神経所見を確認し、全て問題なかったことをボスに報告した。今日のボスの態度を手術室のみんなは、こんな彼は見たことがないと当惑した様子だった。でも僕個人は、今日みたいなとても厳しい状況下でも、きちんと形になる手術にして、しかも術後患者の状態もよくて、とても勉強になったし感銘を受けた。ボスにそう電話で伝えると、"I think you're gonna be a great surgeon. I'm pretty sure."と言ってくれた。それはどうかわからんが、心地よい疲労感に包まれた1日だった。

2 件のコメント:

aomori さんのコメント...

ボスもottoも、かっこいいね!

otto さんのコメント...

その滅多にないはずの腫瘍がまた明後日あります。これがここのよいところですわ。